標津町

北海道標津郡標津町

北海道の最東部、根室振興局管内の中心に位置する標津町。広大な牧草地帯に湿原、オホーツク海に知床連山の山並みなど、ここでは道東らしさをぎゅっと凝縮したような絶景をあちこちで目にすることができる。鮭にホタテ、乳製品と、食の恵みもたくさん。数えきれないほど豊富な地域資源はいま、この町をこよなく愛する人々によってさらに磨かれ、次世代へと受け継がれようとしている。

中標津空港から車で約30分ほど。防風林の並木道が連なる牧草地帯を走り切ると、市街地の向こうにオホーツク海が見えてきた。穏やかな水面のすぐ先に横たわるのは、「近くて遠い島」国後島。そこから北へ目をやれば、道東の大山脈・知床連山が一望でき、少し車を走らせれば、野付半島もすぐそこだ。標津町は、海、大地、山、川、どこを見ても申し分のない絶景に出会える町だ。写真一枚で「これが標津」と表現するのがじつにむずかしい、それほど多様な北の大地の美しさを、この町ではまるごと味わえてしまう。
人口は約5000人、漁業と酪農を基幹産業に形成されてきたが、遡ればここは一万年もの長きにわたり人が暮らし続けてきたという。その理由は、町の中心を悠々と流れる標津川で毎秋繰り返される「鮭の遡上」にあり、縄文時代から現代まで、人はここで絶えず鮭の恵みに生かされてきた。同時に多様な人々による衝突と交流の歴史が繰り返されてきた土地でもある。この壮大な歴史の物語を後世に受け継ぐべく、根室管内の一市三町(標津町・根室市・別海町・羅臼町)は連盟で『「鮭の聖地」の物語〜根室海峡一万年の道程』を申請。2020年に日本遺産に登録されている。
「日本で最も美しい村」連合への加盟は2007年。鶴居村や美瑛町など、道内の加盟町村とのつながりがきっかけの参加だった。町民もこれを好機とし、特産品開発などを積極的に行う動きが見られるようになった。近年も、自治体の協力のもと奈良県吉野町へ和紙原料の提供を行うなど、足元の資源を生かした親交を深めている。
目に映る景色、吹きわたる風、毎食にいただく鮭や乳製品などの食の恵み。そんな体験に加えて今回の取材期間では「この町で、みんなが楽しく暮らし続けるために」と、自ら行動する多くの人に出会えたことが印象的だった。
「この町の人にしてもらったことを、自分ができることで町に返したい」
標津町のいちばんの宝はきっと、何度となく耳にしたこの言葉に尽きるのだろう。

2023年4月取材
執筆:玉木美企子 撮影:田村寛維