十津川村
奈良県吉野郡十津川村
西は和歌山県、東は三重県に接し、奈良県の最南端、紀伊半島の中央に位置する十津川村。その面積は東京23区よりも広く、琵琶湖とほぼ同じ大きさを有する「日本で最も大きな村」でもある。迫りくる山々、急峻な地形。過酷な自然との共存から生まれた「十津川魂」が宿る村。日本一長い路線バスに乗って、ゆるり十津川をめぐる旅へ。
奈良県の5分の1の面積を誇る十津川村。その96%を山林が占め、1000メートル級の山々に四方を囲まれた山岳地帯が続く。平地はほとんどなく、急峻な斜面に200を越える集落が点在し、3300人ほどの村民が暮らす。
移動手段はクルマかバス。「日本一距離の長い路線バス」で知られる八木新宮線は、奈良の近鉄大和八木駅と和歌山のJR新宮駅を結ぶ路線バスで、全長167キロ。谷瀬の吊り橋、十津川温泉、熊野本宮大社などのスポットを駆け抜け、終点の新宮駅まで6時間半で到着する。
「日本で最も美しい村」連合への加盟は2010年。登録されている地域資源に、「谷瀬の吊り橋」、「玉置神社の杉の巨樹群」、「熊野古道小辺路の果無集落」がある。長さ297メートル、高さ54メートル、生活用の吊り橋としては日本一長い谷瀬の吊り橋は、村人たちの汗と涙の結晶による悲願の吊り橋。大学の教員の初任給が7800円だった時代、谷瀬地区の人々が一戸あたり20~30 万円もの大金を投じ、村役場の協力も得て1954(昭和29)年完成させた。先人たちの「助け合い」精神を物語るエピソードだ。
パワースポットとしても知られる玉置神社は、熊野三山(本宮、新宮、那智)の奥の院とも称され、樹齢3000年といわれる神代杉などの巨木が圧巻。世界遺産にも登録された「熊野参詣道小辺路」は、高野山から熊野本宮大社への巡礼道で、人々が千年以上前から祈りを捧げてきた聖地。果無集落には、昔、茶屋や宿場を営んでいた数軒が残り、自給自足で営みを守る姿はまさに日本の原風景そのもの。
村内には、泉質の違う3つの天然温泉が湧き、中でも十津川温泉郷は全国で初めて「源泉かけ流し宣言」を行った先駆け的存在。活性酸素を減少させ、若返りのカギとなる抗酸化物質を増加させることが医科学的にも実証された「心身再生の湯」だ。
2018年には、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」で優れた取り組みを提案、「SDGs未来都市」に選ばれた。歴史をさかのぼれば、壬申の乱(672年)で、天武天皇の吉野挙兵に十津川の民が出陣、その功績により免祖地になり、藩に頼らない自治権ゆえの「自主自立」の精神が培われてきた。そして、村の歴史を語る上で欠かせないのが水害。壊滅的な被害を受けながらも、その都度、村民が一致団結して再起をはかってきた「よみがえりの地」でもある。
2019年7月取材 執筆:高橋秀子