中札内村
北海道河西郡中札内村
とかち帯広空港から車でわずか10分ほど。十勝平野の南西部に位置する中札内村は、日高山脈のすそ野を流れる札内川を懐に抱く「北海道で最もにぎわう村※」。雄大な農の風景に心奪われながら、平らかな道を進めば、めざす村はすぐそこだ。
※道内最大の人口を誇る村(2023年10月現在)
北海道の背骨と表される日高山脈を横目に、飛行機は海側へと弧を描き、陸地に近づきながらゆっくりと高度を下げていく。徐々にその姿を表す十勝平野を上空から見下ろせば、「パッチワーク」との表現がぴったりな、直線で形づくられた広大な畑が織りなす絶景が目に飛び込んでくる。どこまでも続きそうなこの大地の、一体どのあたりが中札内なのだろう。身を乗り出し下界を眺める時間からもう、旅の喜びは始まっていた。
日高山脈、大雪山系、阿寒山系、白糠丘陵地に囲まれた広大な盆地である十勝平野。中札内村はその南西部に位置する人口3850人の村だ。1947(昭和22)年に大正村から分村し、独立。村名は日高山脈中央部を源流とする「札内川」の中流に位置することからつけられた。
空港へは車で約10分、十勝地方の最大都市である帯広へも約30分。そんな利便性の高さに加え、村内に工場をかまえる日本有数の製菓メーカー・六花亭とともに育んできた文化的土壌の奥深さも魅力となって、移住者に人気の村としても知名度を上げている。さらに注目すべきは枝豆、豚肉、鶏肉などの農畜産物を中心としたふるさと納税返礼品事業で、寄附額は2022年、じつに13億円にまで達したという。そんなふうに、さまざまなかたちで中札内を知る人の多い、「伸び盛りの村」なのだ。
「日本で最も美しい村」連合への参画は2016年。地域資源として登録されたのは、防風保安林に守られた農村原風景、そして北の大地を彩るアートと文化だった。その地域資源を守るだけでなく、近年は「『日本で最も美しい村』連合加盟村にふさわしい、『美しい村づくり』を行おう」、との意識が村政の方向性にも反映されていると、森田匡彦村長は笑顔で話す。
たしかに、「美しいとは何か」、との問いに向き合えば、その言葉が含む範疇は限りなく広がっていく。そしてここでは目に飛び込んでくる美さえ多様だ。たとえば、広々として平坦な中心地の道は「日本一ゴミ拾いをする村」のスローガンのもと清らかに整っていて、車を走らせれば心まですがすがしく晴れ渡っていく。六花亭アートヴィレッジに残る、開拓時代の風景を今に伝える柏林の小道に立てば、荘厳ささえ感じる美が満ち、原野の記憶が土地から湧き上がってくるようだ。そしてピョウタンの滝をめざし山へと向かえば、圧倒的な自然の美に溶け込むように、散策やキャンプを楽しむ家族連れの姿も目にすることができて──。中札内村で、人の手が生み出す里の美しさと「ありのまま」を感じる自然の美しさの両方に身を浸しつつ、さらに奥深い「美しい村」づくりへの想いを感じてみたい。
2023年10月取材
執筆:玉木美企子 撮影:田村寛維