上島町

愛媛県越智郡上島町

PHOTO:©竹林清志

瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ離島・愛媛県上島町。「日本で最も美しい村」連合には2009年に加盟。桜の名勝「積善山」と瀬戸内海の島々が織りなす多島美、青いレモン、法王ヶ原の松林が地域資源に認定されている。11月、温暖な瀬戸内海の風はやさしく爽やかだ。道路脇の植え込みにはみかんやレモンの木が目立つ。柑橘系の香りをまとった風を切って、数台のロードバイクが通り過ぎていく。

愛媛県東北部、瀬戸内海のほぼ中央に位置する上島町は、古くから造船や海運業、塩づくりで栄えてきた。2004年に、弓削町、生名村、岩城村、魚島村の4町村が合併 し誕生。瀬戸内海航路の要衝として、古くから国内外の人や文化が出入りしてきた経緯があるためか、まちは、島外の住民や文化に対して寛容、オープンマインドな人が多い。
上島町には国内外からのヨット乗りが旅の途中に寄航する。そうするとまちの人たちはすぐに様子を伺いに行く。異邦人に対してお世話好きであるのは、先祖から脈々と受け継がれている交流の遺伝子に拠るものだろう。
そんな風にヨットでここ上島町に立ち寄ったまま住み続けている人は言う。「このまちは夕陽も格別に美しいけれど、私が今居る場所は、夜が明ける瞬間が最も美しい。こんな美しい場所は世界中探してもない。島の裏側から登ってくる太陽が、まず向かいの因島を照らし始め、その光の階調が段階的に海を渡ってこちらへやって来るのが見える。それは毎朝みても感動する」。こんなエピソードが上島町にはいくつもありそうだ。
そして上島町は、四季折々に豊かで鮮やかな表情を見せてくれる。春には桜が島を覆いつくし、「青いレモン」が旬の秋から冬にかけては、瀬戸内海の日差しをたっぷりと浴びた柑橘類が島中にたわわに実る。家の庭先や街路樹にも、レモンやみかんの木が植えられているのだから驚きだ。
1999年に開通した「瀬戸内しまなみ海道」は、6つの島々を9つの橋でつなぎ、日本で唯一、自転車道が併設されている高速道路だ。その開通を機に、愛媛県はサイクリングパラダイスになった。上島町は「瀬戸内しまなみ海道」とは直接、橋ではつながっていないもののサイクリストの人気は高く、上島町の3つの島をつなぐ「ゆめしま海道」や、岩城島の積善山(標高369.8M)へのヒルクライムを楽しむサイクリストは多い。信号機がひとつもなく、乗船の自転車代は無料、橋の上から存分に見渡せる多島美や数あるサイクルオアシスなど、町中にサイクリスト優先のおもてなしが設けてある。
上島町にいると、私たちが普段どれほど自然からの恩恵をもらって生きているかを肌で感じる。海からの恵みと爽やかな風、美しく毎日違う色合いを見せる夕陽。その恵みを次世代にどんな物語で受け渡していくのか。朝の光が一瞬一瞬に明度を上げ、あけぼの色の彩度を帯びていくように、自然と人との対話が上島町に輝きをもたらしている。

2015年10月取材
執筆:渡部みのり