高山村
返町睦雄

(株)ふるさとセンター山田 代表取締役社長

集落で買い物が出来る店を残そうと、住民たちが一致団結して株式会社を設立。JAの店舗を引き継ぎ、食料品や日用品などをそろえた店の運営も 11年目を迎えた。

孫や子どもにアイスクリームが買える店を残したい

今から10年前の2007年、JA須高山田支所の店舗が閉鎖されることになり、「このままでは地域住民が買い物に困ってしまう」と危機に直面した住民たちが、「孫や子どもにアイスクリームが買える店を残そう」を合言葉に「株式会社ふるさとセンター山田」を設立。趣旨に賛同した住民たちから出資金を一口3万円で募り、集まった774万円を元手に店舗を引き継いだ。
店内に入ると、食料品、生鮮品、惣菜、酒、日用品などがずらりと並ぶ。店の一角には、壁で仕切られたスペースがあり、そこは住民たちが集まってお茶などを楽しめる「サロン」的な場所。この日は近所のお父さんたち4、5人が集まってコーヒーを飲みながらリンゴをつまんで談笑していた。
今年6月、初代社長を10年務めた渋谷久太郎さんから社長を引き継いだ返町睦雄さんは「高山村の中でも、ここ中山地区は住民のまとまりがある集落。スムーズに賛同してもらい店舗を受け継ぐことになりました」と説明する。昨年からは、大手パンメーカー「山崎製パン」のフランチャイズ店である「ワイショップ」が入ったため、店内に並べる商品もより幅広く、住民たちのニーズに合ったものを取り揃えて販売できるようになった。「ワイショップにしてから、若い人の利用も増えてきました。ここは、買い物だけでなく住民たちが集ってお茶を飲めるサロンの役割もあれば、学校帰りの子どもがトイレに立ち寄ることも。毎日のように来られる方もいます」
先に同じような取り組みで成功していた長野県松川町に視察に出かけ、店の立ち上げの参考にした。ここ、高山村の店舗の特徴は「株式会社と言えども、地域住民の結束力が強く、役員なども協力してもらいながら、地域全体で盛り上げようとしているところです」と返町さん。
店舗では、コイン精米や郵便、宅急便の取り扱いなどもおこなう。当初の「孫や子どもにアイスクリームが買える店を残そう」との言葉の通り、夏場はアイスクリームが売り切れてしまい提供が間に合わないことも。売れ筋のナンバーワンはお酒で、お菓子、惣菜、冷凍食品などが続く。生ゴミ専用の紙袋やEM菌(微生物の培養液)を使った石鹸、中に切り干し大根や野沢菜などが入ったおやきも並ぶなど、ご当地カラーを感じさせるラインナップだ。
ここ、中山地区の住民たちの結束力がとりわけ強い理由は、ずばり「水」にある。山が浅いため、他地区から引いてきた用水を大切に使うためには、必然的に地域住民たちが協力せざるを得なかった。高山村だけでなく、高齢化による買い物弱者の増加はどの地方でも同じように抱えている課題だ。「高齢者がまず一歩、外に出る。そして、他の人とおしゃべりが楽しめるような、そうした場づくりは必要です。年寄りたちが作った野菜の直販所も充実させて、これからも、地域のニーズに合わせた品揃えにしていきたい」と返町さんは話している。

2017年10月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維