塚原
冨高利弘

グランピングリゾート「Sense of wonder」オーナー

塚原の手付かずの大自然を活かしたグランピングの宿をオープンして1年。世界中を旅して様々な宿を見てきた冨高さんが、「塚原の強み」を最大限に活かしたのが、このグランピングというスタイルだ。

塚原の強みである「景観」を最大限に活かしたグランピング

これまで世界40か国以上を旅してまわり、いつかは宿をやりたい、との思いがあった。大分に戻ってからまず手始めに、旅先で出会った雑貨を仕入れて販売する店を湯布院にオープン。経済的にさらなる「強み」を考えていた時、マクロビオティックの本に出会い、人間の身体における「塩」の大切さを知る。そこから食の世界を追求し始め、塩、味噌、砂糖など調味料に関することも独学で勉強し自然食品店を始めた。
次々とお店がオープンする賑やかな観光地「湯布院」。その喧騒から離れ、もっと静かな場所で暮らしたいと思った時に出会ったのが塚原高原だった。この地に惚れ込み、湯布院から移住したのが10年前。自然食品店に加えレストラン「自然食ゆうど」も始めた。
昨年の夏には、大自然を満喫しながらラグジュアリーなキャンプが楽しめる「グランピング」の施設をオープン。2棟の貸し切りスタイルで、シックな宿泊棟とテント式のティピを兼ね備えた贅沢な造りだ。ちなみに「グランピング」とは、「グラマラス」(豪華な)+「キャンピング」の造語。ホテルのような快適さとアウトドアをミックスさせた、大人のための新しいキャンプスタイルをいう。
「世界を旅して、色々な宿を見てきましたが、どれもそのままコピーしてここに持ち込めるものはありませんでした。ならば、この塚原の強みを最大限に活かしてできるものは何か、と考えた時に景観を活かしたグランピングに行きついたんです」
特別な観光資源がなくても始められ、日本での歴史も浅いので、競合が少ないのも魅力だった。「グランピングこそ、『日本で最も美しい村』連合に加盟している町村にとって大きなチャンスだと思います」と冨高さん。
「火を介してコミュニケーションができる宿」の通り、日が沈む頃には、たき火を囲みながら食事が楽しめる。メニューは、魚介の炭火焼やダッチオーブンを使ったアウトドア料理。お料理はすべてサーブされるので、落ち着いた大人の時間が過ごせる。人工的な音やモノを排除した大自然のなか、聞こえてくるのは、虫の音と風の音、そしてたき火のパチパチと燃える音。食事が終わったら、ティピに移動してデザートタイム。
「21世紀の価値は上質な水と空気。そうした意味で、ここには由布岳から湧くおいしい水があって、見渡す限りの緑が新鮮な空気を運んでくれる。それだけで実はすごい価値がある場所なんです」
塚原の特別感をもっと的確に情報発信できれば、ここは、「resort地」として、「re」(繰り返し)訪れてもらえる場所になると確信している。「当たり前」の場所を「特別な」場所へ変えてゆく。それが冨高さんの自分に科したミッションだ。
厳しい市場で熾烈な争いが繰り広げられる都会が「レッドオーシャン」なら、塚原は「チャンスが限りなく広がる」ブルーオーシャン。このブルーオーシャンを舞台に「観光」で塚原の価値を磨き上げていく。

2018年7月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維