吉野町
東 利明

吉野山観光協会 会長

吉野山で営業する旅館、飲食店、神社仏閣など115軒を統括する観光協会のトップとして、観光客の誘致に全力を注ぐ。役員に40代を起用するなど、組織改革も行いながら快進撃は続く。

奈良じゅうの「鬼」が冬の吉野山に集まるんです

「1年のうち、360日は着ています」という吉野山観光協会の法被姿で、吉野山の観光振興について話し始めると止まらない。東さんは、これまで桜の時期に偏っていた吉野山への集客のPRを、「通年型観光」に切り替えた。冬の時期など、観光客の足が鈍る時期にも、積極的にイベントを仕掛け、年間を通じての「にぎわい創出」に力を注ぐ。
その一つが、金峯山寺節分会の奉賛事業である「鬼フェス」。冬の吉野の新たな魅力を生み出すために生まれたイベントで、吉野山の「鬼」とともに、さまざまな企画や飲食を楽しめる内容。「それまで、毎年2月の節分にあわせて金き んぷせんじ峯山寺の境内で、飲食やライブが楽しめるイベントを行っていましたが、一過性になっていた反省から、内容を大幅に見直しました」。期間を1カ月間に延長し、エリアもまち全体に拡大するなど、工夫をこらした。
「結果的には宿泊客が増え、お客様からは、来年もまた来たいという声もいただいています。8月には初めての試みとなる夏フェスを境内で行います。歌や踊り、古典芸能などを楽しめる縁日のようなイメージです」
民宿「太鼓判」やゲストハウスなどを経営する東さんは、1973年、吉野山で最初に宿を始めた先駆的な存在。「当時、一泊二食1600円で始めたのが最初。これまで、40年以上にわたって、吉野山で商売をする人々の変遷を見てきました」と話す東さん。
「一番大事なのは、何よりまず、『その商売が好き』であること。私は接客もお客様も好きですし、この仕事をしていてしんどいな、と思ったことは一度もないんです。好きにやらせてもらって本当に面白いです」
吉野山を訪れる年間の宿泊者数のうち半数近くがリピーター。「帰り際に来年の予約をされていかれる方も多いです。しかも他の宿に浮気をせず、同じ宿を選んでくださる。リピーターが多い、ということは『地域に魅力がある』ということ。それが吉野山なんです」
天性の「ひと好き」「祭り好き」。会長に就いた時は、役員を一新し、40代の若手を増やすなど、それまでの流れを変えたことで風当りも強かったという。「法被を着て町のあちこち、宣伝に走り回っていると、会長たるもの、もっとビシッとして威厳を出さないとダメだと。いらんこと、せんといてくれとお叱りを受けたこともありました」と豪快に笑い飛ばす。若手メンバーには「いつも自分があかんことを言ってたら、そう指摘してくれと伝えています」
今年6月、吉野町は「日本で最も美しい村」連合の総会の地に選ばれた。
「加盟する町村、それぞれがもっと情報交換や、お互いを宣伝し合うなど連携を取り合って『美しい村に入って良かった』と思える価値観を打ち出す必要があるんじゃないでしょうか? 例えば新聞のように、一度読んで捨てられてしまうものでなく、永久保存できるガイドブック。うちに泊まったお客さんが自分の部屋に持ち込んで、読みたくなるような立派なもの。それを読んで、じゃあ他の美しい村にも行ってみようか、となるような。そうしたお互いの連携があってこそ、『美しい村連合としての価値』があると思います」

2019年4月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維