中之条町伊参/六合町田 茂
白久保お茶講保存会長
中世の時代、武士や貴族の間で広まった「闘茶」。茶の飲み比べ当てをする遊びで、賭け事にまで過熱したため禁止されたが、それほどまでに人は熱中した。その流れを受け継ぐのが伊参に残る「お茶講」文化だ。
人と人を結び付ける “お茶講” が残る町
白久保地区の公民館として使われている茅葺き屋根の家。ここが、年に一度、お茶講が行われる舞台となる。ちなみに、「講」は「寄り合い」を意味し、お茶講とは「集まって茶を飲む寄り合い」のこと。この白久保のお茶講は、14世紀の中頃、室町時代に行われた「闘茶(茶の香りや味を当てるゲーム)」の形式を受け継ぐもので国の重要無形民俗文化財に指定されている。
「白久保のお茶講がいつ伝承されたのかは定かではありませんが、最古のお茶講の記録『御茶香覚帳』と白久保に残る記録方法が同じことから、当時の形式がそのまま守られてきたものと思われます」と町田さん。
もともと、茶道は武士の嗜みだったこともあって、毎年2月24日に開催されるお茶講には13歳以上の女子は参加できないが、一般向けに行っている体験イベントは誰でも参加でき、全国から体験者が訪れるという。
お茶の配合に使うのは、渋茶(煎茶)、甘茶、チンピ(みかんの皮を干したもの)の3種類。その配合を変えた4種のブレンド茶を、参加者は事前に試飲して味を覚えておく。その後、先に飲んだ4つのお茶が順番を変えて出され、参加者は1回ごとに何のお茶かを答える。計7回、飲み終わると正解が発表される。全問正解者や全問不正解が出ると、その年は豊作になると言われる。
「お茶講では、30人ほどの参加者がお茶の飲み当てを競います。当たった人には景品としてアメが配られるのですが、意外と子どもの方が正解率は高いです。子どもはもちろん、大人も思った以上に白熱しますよ」
参加者の名簿「お茶講連名帳」には、名前、当たり外れを含めてすべて筆で記録される。正解の数によって、「イチッポウ(一問正解)」「ニフクベ(二問正解)」「サンカラカサ(三問正解)」「ハナカツギ(全問正解)」など特別な名称がつけられ、それぞれの名称に応じた挿絵(サンカラカサは、唐傘の絵、ハナカヅキは梅の絵)が描かれる。ユニークなのが、お茶講の間だけ参加者につけられる名前。「花、鳥、風、月」「金、銀、大豆、蕎麦、葱」といった生活に密着した名前がつけられる。
「もともと、闘茶は身分を隠して遊んだゲーム。だから本名でなく花、鳥、風、月などの名前で、身分の上下なく興じることができたのです」
毎年、年間300人、のべ約1万8000人がお茶講を体験してきた。
「お茶講は、子どもからお年寄りまで、人と人を結び付け、和気あいあいと楽しむ現代のコミュニケーションツール。町内の子どもたちは小学4年生になると、全生徒がお茶講を体験しますが、一種の元服のような通過儀礼です」
歴史的背景からほとんど消滅したお茶講が残る中之条町。近年、白久保のお茶講が伝わった経緯をたどると、東京の名門、青山家と中之条町の密接な結びつきが明らかになってきた。「東京・青山」のルーツは「中之条町の青山」にあり。お茶講をめぐる歴史ロマンが時代を経て、ふたつの「青山」を引き合わせている。
2020年1月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維