中之条町
伊参/六合
山重徹夫

中之条ビエンナーレ総合ディレクター

伊参の廃校を活動拠点に、2年に一度の中之条ビエンナーレの開催、海外のアーティストを招聘しての創作活動など、アートを通じた町の活性化、国際交流を行っている。

中之条から世界へ。世界から中之条へ

2006年に山重さんが中心となって立ち上げた中之条ビエンナーレ。2019年で7回目を迎えた。「町が美術館に変わる」をコンセプトに、国内外からアーティストが集まり、町中を舞台に現代美術作品が展示される。その総合ディレクターを14年間務める。「きっかけは、作家自身が創作できる場所と作品を発表する場が単純にほしかったから」と山重さん。舞台になるのは、廃校や廃線、築300年の蔵など、地元の人も普段入ったことがないような場所。「失われゆく遺産」が表舞台として再び注目を浴びる。
東京の多摩美術大学を卒業後、自身でも創作の場所を探していた。保養所をアトリエとして作家に貸し出すなど、アーティストへの支援が進んでいたこの町で、「いい場所がある」と役場から提案されたのが中学校の廃校を活用した伊参スタジオ。伊参との縁は以前から深く、大学時代の友人に、「泊まれる廃校がある」と聞いて訪れたのが初めての群馬県で、ここ伊参だった。
「伊参に引き寄せられましたね。温泉もあっていい場所だし、ここの仲間になりたい、と純粋に思いました」
2010年にオープンした中之条町のアートと町の情報発信基地、クリエイティブセンター「tsumuji」の立ち上げにも携わった。2年に一度の中之条ビエンナーレ開催年以外は、海外との国際交流を重ねている。「アーティスト・イン・レジデンス」とは、一定期間、ある土地に作家を招聘し、その土地に滞在しながら制作をしてもらう事業のこと。たとえば、フィンランドのアーティスト村として知られるフィスカル村では、留守宅の作家の家にホームステイしながら滞在して作品を作り、展覧会を開催した。逆にフィンランドから作家が日本に来た時は同じように彼らをもてなす。こうしたアートを通じた国際交流を20数か国と行い、世界中を飛び回る日々が続く。
アーティストたちが六合へ来た際は、一つのレジデンスにまとまって滞在するのでなく、集落の空き家に滞在してもらい、地域や住民とかかわるケースも増えている。
「地形が変われば、そこで育つ文化も人も変わります。六合はかつて、草津温泉が冬場、寒くて住めなかった頃、そこから移ってきた人たちが住んだ場所。今も他所から来た人に対してオープンで初日から一緒にBBQしたり、おもてなしの気質があります」
そうした六合特有の地域性も、作家と住民との交流を後押ししている。
「群馬県では公共建築費の一部を芸術振興のために使う『1% for art』を打ち出すなど、県を挙げて芸術活動を支援しています。この先は、ビエンナーレの時期だけでなく、通年を通してアーティストを受け入れる体制を整えていきたいですね」
第一回目のビエンナーレ立ち上げ時は、当時住んでいた神奈川・逗子から通っていたが、今では自身も群馬県へ移住。二児の父親になった。
「伊参スタジオに泊まりこんで立ち上げの準備をした思い出など、ここには特別なふるさと感があります。この先も伊参はずっと自分のベースとなる拠点です」

2020年1月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維