中之条町
伊参/六合
伊能正夫

中之条町長(2014-2022)

2019年、切り絵が繋いだご縁で訪れたスイスでは、「スイスの最も美しい村」を4か所ほど巡り、各村の町づくりを視察した。温泉、花、アート。多様性を推進力に個性ある町づくりに挑戦する。

花とアート、個性ある町づくりで次世代につなぐ

「日本で最も美しい村」に加盟する縁で、「切り絵」という町長の趣味がつないだ「スイスの最も美しい村」訪問。17世紀以降、切り絵が盛んなスイスでは、物語性、個性的な表現力を持った作品が作られている。その技は、伝統工芸として受け継がれ、国内に約1000人の切り絵アーティストがいると言われている。
「切り絵や記念硬貨のデザインの分野できちんと生計を立てている人たちがいて、ネコをテーマにした町づくりなど、小さくても特徴ある町づくりをしているのが印象的でした。そして、なんと言っても花。スイスではどこへ行っても花の美しさが目に留まりました」
「花と湯の町」を掲げている中之条町では、近年、力を入れている取り組みの一つに、六合の花き生産がある。町ではクリスマスローズやアルケミラなど200種類の花を「六合の花」として東京や大阪に出荷、その品質が高く評価されている。
「六合(くに)の花はブランド化されていて、一定の価格で取引されています。山野草のように、昔は添え花として脇役だった花が、今は主役としてニーズが高まっていて、ブーケやフラワーアレンジメントなどに使われるそうです」
市場だけでなく、直接花屋にも卸される六合の花の強みは、「今、こうした花が求められている」といった現場の情報が直接、生産者側に提供される点。
「いいものを作って出せば必ず売れる、というビジネスモデルのお陰で、移住して自分でも花き生産を始める新規就農者が続くなど、いい相乗効果が生まれています」
こうした新規就農者の強力な味方が、「先輩指導者の存在」。生産に必要な機械を貸したり、無償で苗を分けてあげるなど、地元住民の人柄、あたたかさが大きく貢献しているという。
人口減対策はどの地方でも同じ課題だが、「日本中が同じことをしていてもパイの奪い合いになってしまう。何か特化したテーマで人を集めるしかないでしょう」
その代表的なものが、中之条ビエンナーレ。これを機に町に移り住む作家も多く、「ビエンナーレの1か月だけでも町は多くの人で賑わいます。150名ほどの作家のうち50名が外国人を占めるなど、作家同士の国際交流も活発になっています」
近年、町のルーツを巡るホットな話題が「中之条町と東京・青山のつながり」。本来、茶の生産地でない中之条町でなぜ「お茶講」という京の公家文化が残っているのか、そこには、中之条町の青山という地が、東京・青山にある青山家のルーツであり、青山家が中之条町にお茶講を伝えた可能性が高い、という興味深い歴史が分かってきた。これをきっかけに、中之条町、東京の青山、青山家が江戸時代、藩主を務めた岐阜県郡上市の三都市で文化交流が始まり、青山家の菩提寺、南青山にある梅窓院で「郡上踊り」が始まるなど、かつてのご縁が復活、現代に蘇っている。
「この先、人口が減っていくのは間違いないことですが、今も残る文化、美しい景色などを次の世代につないでいくことが、生きている私たちの役割なのかと思います」

2020年1月取材