上勝町
徳島県勝浦郡上勝町
徳島県のほぼ中央に位置し、人口は約1500人の四国でもっとも小さな町。約9割が山林で覆われた水源の町であり、あえて目指さなければたどり着くことのない場所だ。しかし、きっとあなたもどこかで、上勝町の名を目に耳にしたことがあるはず。“葉っぱビジネス” の町、そして日本初のゼロ・ウェイスト宣言で世界が注目する町。そこにはいつも、考え、選択し、行動する町民たちの姿がある。
徳島市街を抜け、勝浦川を遡上するように、県道16号を山中へと進んでいく。小さな集落をいくつかすぎて、いよいよ民家も少なくなるころ、「上勝町」の標識に、ああやっとついた、間違っていなかったとホッとする。町内には鉄道の駅はなく、徳島市内から車で50分ほどの道のり。お世辞にもアクセスが良いとは言えない、山懐に抱かれたこの町こそが、世界が注目するゼロ・ウェイストタウンであり、地域活性に一つの光明をもたらした「葉っぱビジネス」の拠点、上勝だ。
「日本で最も美しい村」連合への加盟は、発足年の2005年。日本における「美しい村運動」の原点と呼ぶべき地域の一つだ。季刊「日本で最も美しい村」への登場は2013年以来の2回目。8年の歳月を経て、カフェ「ポールスター」はすっかり町の拠点となり、クラフトビールの「RISE&WIN」が誕生し、ゴミステーションはゼロ・ウェイストセンター「WHY」としてリニューアルを果たした。
かねてからの取り組みは今なお脈々と続きながら、町も、人もまたさらなる魅力を放っていることは噂にたがわず、改めて驚かされる。と同時に今回、上勝ムーブメントの中心人物というべきみなさんにお話を聞いてみると、「今だからこそすべき、上勝らしい選択とはなにか」に真剣に、慎重に向き合う人ばかりだったことが印象的だった。
地域活性ビジネスの希望の星として、またSDGsの理想郷の一つとして報じられている上勝の一側面は、もちろん事実。ただ一方で、あらゆる地方と同じように、人口減少やそれにともなう集落維持の課題も依然として彼らの前には横たわっている。それでもこの町にはすでに、さまざまな課題を大胆な選択と、それに伴う改革によって克服してきた、体験が積み重ねられている。人々は地域のために自ら考え、議論し、選択して、動く。そんな地方自治の胆力が、この地域を輝かせているのではないだろうか。
地域への愛を胸に、未来を思考すること。そしてそれを絶えず繰り返し、おのおのに問い続けること。その灯が消えない限り、いつまでもここは、世界の憧れを集める場所であり続けるのだろう。
2021年10月取材
執筆:玉木美企子 撮影:田村寛維