小値賀町

長崎県北松浦郡小値賀町

長崎県五島列島の北端に浮かぶ人口2500人ほどの小値賀町。なだらかな地形と遠浅の海が広がる小値賀島を中心に、今や無人となった野崎島など大小17の島からなり、島全体が西海国立公園に指定されている。江戸時代、キリスト教が禁止され、厳しい弾圧の時代を生き抜いた潜伏キリシタンにまつわる歴史や遺産ももつ。密かに信仰が続いた野崎島の集落跡が、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に認定された。

小値賀島へのアクセスは、佐世保からフェリーで約3時間、福岡からは約5時間。博多港を深夜に出航すると、明け方4時半過ぎに小値賀島に到着する。島外からのフェリーや高速船が発着する小値賀港ターミナルは島の玄関口。島での過ごし方や様々なガイドツアーを紹介する島の観光案内所「おぢかアイランドツーリズム協会」もここにあり、スタッフがターミナルに着いた旅人たちを人懐こい笑顔で迎えてくれる。
火山の噴火によってできたこの島は、「赤い大地」という名にふさわしく、火山岩の砂れきでできた赤い砂浜が広がる赤浜海岸など、いたるところで赤土を目にする。
町の中核産業は漁業だ。ブリやイサキ、ヒラマサなどの一本釣りをはじめ、ウニやアワビ、サザエなど磯の海産物が古くから小値賀に多くの恵みをもたらしてきた。農畜産業では稲作と肉用牛が中心で、この地で育てられた子牛は、全国に出荷され高級なブランド牛として売られるなど、第一次産業の大事な一端を担っている。
島の観光として打ち出している「古民家ステイ」では、「暮らすように滞在する」をコンセプトに、美しくリノベーションされた古民家1棟を貸し切って、快適な島時間を提案する。その一方で、県外からの移住者が、この地に残る「伝統構法」で作られた、昔ながらの日本家屋に命を吹き込み、「自然との調和」をテーマに、宿のオープンに向けて汗を流すなど、小さな島ゆえのしなやかな動きが色々と起きている。
小値賀町が「日本で最も美しい村」連合に加盟したのは、2009年。認定された地域資源は、島の東部に位置する「野崎島と旧野首教会」、「西海国立公園の景観と歴史」。長崎で一番小さな自治体ながら、移住者の数は約150名と人口の6%を占めており、地域おこし協力隊を早い時期から採用するなど、県外の人材を積極的に登用してきた。
小値賀のもう一つの魅力、野崎島へは船で約30分。かつて禁教政策が敷かれ、厳しい弾圧があった時代、潜伏キリシタンたちが密かに信仰を続けた。島の中心、小高い丘に建つレンガ建築の旧野首教会は、「野首集落」にある。わずか17世帯の信者たちが食事を切り詰めてその費用を捻出し、教会建築の名工、鉄川与助の設計・施工により1908年に完成した。弾圧からの「解放」と「喜び」。時を越えて人々の静かな祈りが今も息づくこの場所が、6月に世界文化遺産に認定された。

2018年5月取材
執筆:髙橋秀子 撮影:田村寛維