鶴居村

北海道阿寒郡鶴居村

PHOTO:©タンチョウの朝 和田正宏

北海道の道東、釧路空港からクルマで約40キロ。阿寒湖と広大な釧路湿原の間に広がる阿寒郡鶴居村。人口2500人ほどの小さな村に、基幹産業である酪農の牧歌的な景観が広がり、村の名前の通り、特別天然記念物タンチョウが人々と共生する。冬のシーズンになると国内はもとより、海外からもカメラを手にした多くのタンチョウ愛好家たちが訪れる。7月5日〜7日には「日本で最も美しい村」連合総会・フェスティバル2018 in つるい」が開催される。

昭和12年に舌辛村(現釧路市阿寒町)から分村し、昨年、平成29年には開村80周年を迎えた鶴居村。人口2500人ほどの小さな村ながら、ここ数年、人口は横ばいを維持している。宅地造成による移住・定住促進にも取り組み、釧路へのベッドタウンとして居を構える人々が増えている。
村を支える基幹産業は酪農。道内でも屈指の酪農の里であり、良質な牛乳から作られるチーズ「鶴居」は国内の権威ある「オールジャパン ナチュラルチーズコンテスト」で6大会連続受賞を果たすなど、その美味しさはお墨付き。村内の加工体験施設「酪楽館」は、珍しいゴーダチーズ作り体験なども行える人気の施設だ。
「日本で最も美しい村」連合に加盟したのは平成20年。登録資源は、特別天然記念物のタンチョウ、酪農景観。釧路湿原はかつて谷地(やち)と呼ばれ、「不毛の大地」とされてきた。昭和の高度成長期に開拓構想が持ち上がったが、環境保全の動きもあり、その大部分は手つかずで残ったことが、奇しくも絶滅危惧にあったタンチョウを救う「楽園」の地となった。
見る者の心をとらえてやまないタンチョウ。その名前は赤い(丹)、頭(頂)から来ており、真っ白な身体に黒い首と翼、そして赤い頭頂部という、その色彩的な美しさも魅力。旧千円札や日本画のモチーフとしても使われ、古くは「鶴の恩返し」という民話があるように、日本人には馴染みの深い鳥だが、ここ鶴居村の人々には、「鳥」というよりは、人間の「仲間」として共存共生してきた歴史を持つ。ちなみに、北海道の先住民族であるアイヌの人々からは「サルルン(湿原)カムイ(神)」=「湿原の神」と呼ばれてきた。
毎年、冬になるとタンチョウを目的に訪れる観光客が集中し、村内の宿は一年前からリピーターの予約で埋まるほどの人気。国内はもとより海外からもファンは多く、タンチョウを脅かすことなくねぐらを見られる唯一の場所「音羽橋」は、早朝から撮影スポットを確保するカメラマンや観光客で賑わう。厳寒期、川霧のなかにたたずむタンチョウの姿は幻想的であり神秘的でもある。
訪れた2月、早朝はマイナス16度。内陸型気候で、比較的、雪は少なく晴天の日も多いが、日によってはマイナス30度まで下がる。大地の全てが凍りつくような厳しい寒さゆえに、あらゆる生命の輝きは美しく研ぎ澄まされる。

2018年1月取材
執筆:髙橋秀子 撮影:田村寛維