赤井川村
滝本和彦

アスパラガス農家 滝本農場

先々代が、徳島の神山から北海道ニセコに入植したのが今から100年以上前。赤井川村の土地で、有機農法で美味しいアスパラガスを作るのが滝本さんだ。農園には、全国から季節労働者も多く集まり、滝本さんの周りにはたくさんの笑顔が満ちている。

肥沃な大地で有機アスパラを作るこの道の第一人者

ぐるりと四方を山に囲まれ、「カルデラの中で暮らす」という言葉がぴったりな赤井川村。
取材に伺った5月初旬は、まさにこれからアスパラの収穫ピークを迎える繁忙期。農場の納屋には、季節労働のスタッフたち10数名が集っていた。「コンブ漁、鮭加工、みかん収穫・サトウキビ刈りと日本中を移動しているフリーターが声を掛け合って集まってくれるので、お陰で人手の不足はなく助かってます。」と滝本さん。
農業のキャリアは50年。この地で、有機アスパラ、にんにく、ブルーベリーなどを栽培する。「農家は人と同じことをやっていてはダメ。ちょっと人と違う、変わっているくらいでないとね。新規就農者を受け入れますよ、と言ってもまず私のところには来ないよね。僕自身が『変わり者』だからかな」と笑う。
色々な作物を作る農家から、アスパラをメインにしたのが2000年から。JAS有機ホワイトアスパラを栽培したのは、北海道で滝本さんが初めて。
もともと、害虫が少ない土地柄で、農薬を使わずとも美味しい作物が育っていた。ある日、新聞を読んで自分のやっていることは有機農法だと気づき、JAS有機を取得したのだという。北海道で有機アスパラの第一人者だ。その他にも、にんにくは作り続けて40年。黒にんにく加工も行う。
青森産に比べて粒は小さいけれど、味、香りともに強いのが特徴。花粉みたいな甘い味がするんだよ。鶏フンの配合も決まっているし、粒や大きさにこだわらなければ、作るのは難しくないよ」
アスパラにしても、新規の人が有機で作ろうとすると難しいが、苗を使えばさほど難しくないという。「肥料も特別こだわっていないし、アスパラ作りのハードルを少しでも下げたいと思って。僕の農業の哲学? 『夏、働いて、冬、働かない』かな」
アスパラ作りを始めた頃、独自の販売ルートを開拓すべく、自ら東京に売り込みに出かけた。東京の紀ノ国屋スーパーにアポなしで飛び込むと、運よく青果バイヤーがいて、滝本さんが有機で作るホワイトアスパラに興味を持ってくれた。2001年頃のことだ。この契約をきっかけに他の店からも引き合いが増えていった。
ちなみに、ホワイトアスパラは陽があたらないよう遮光フィルムを使ってハウス栽培される。まったく陽に当たらないことで真っ白な美しいアスパラガスが育つ。そして収穫は機械を使わず、1本、1本、手作業で丁寧に。滝本さんのアスパラは主にネット販売が中心で、年に一度の収穫を心待ちにするファンも多い。
「ここの良さは何より環境の素晴らしさ。人の住んでいない川上から綺麗な水が流れて、初夏には蛍が飛び交う。住み心地は最高でしょう」
滝本さんの農場を手伝う実の娘さんと、もうすぐ息子さんのお嫁さんになる予定のお嬢さん。ふたりに寄り添われて、滝本さんの表情が優しい父親の顔に変わった。

2017年4月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維