高森町
大野 希
加藤誠佑
一般社団法人 TAKAraMORI
高齢化や後継者不足といった高森町の課題は、どの地方でも同じように抱えるテーマだ。一方で、世界農業遺産登録や世界ジオパーク認定など期待できる追い風も高まっている。そんな中、町の資源を生かし、町内外と様々な連携を取りながら行政主体から、民間活力を活かした町づくりを進めるために設立されたのが、一般社団法人「TAKAraMORI」だ。
宝の森・高森を盛り上げる地域の「愛されびと」
高森にはたくさんのお宝がある、というメッセージを込めた「TAKAraMORI」。メンバーは町づくりのプランナーである大野希さん、フレンチのシェフである加藤誠佑さんなど4名。メンバーはみな、高森町の地域おこし協力隊だ。大野さんは福岡県久留米市出身。公園などを作る町づくりのコンサルタントの仕事をしていたが、最後まで仕事を見届けられないというジレンマを抱えていた。「もっと人と向き合う仕事がしたい」と思っていた矢先、人の縁もあって、町の緊急雇用対策で採用され、1年間、草くさ部かべ北部の活性化のためのワークショップなどに取り組んだ。
その一年間で草部地区の住民との信頼関係を築き、結果、草部南部からも、同じような取り組みを要望されるほど、地域に求められる存在になった。「町にこのまま残ってほしい」。地域住民の願いもあり、現在は地域おこし協力隊員として、高森町を活性化させるための体験型プログラム「高森じかん」を企画・運営する。
このプログラムは、高森町の4つの地域の頭文字「た(高森)」「の(野尻)」「し(色見)」「く(草部)」から取って、「た・の・し・く」暮らすがテーマ。トレッキング、ジビエ料理、田楽体験など、高森の人が講師となって高森の文化、食、歴史、自然など「高森の日常」を伝えている。
一方、フレンチのシェフである加藤誠佑さんは熊本県生まれ。料理人として県内、県外の各店で修業を重ね、高森に縁があって引越してきた。地域の住民から愛されているまちなかカフェ「Water Forest」では、高森町産にこだわった食材を使ったお野菜たっぷりの、目にも楽しいメニューがいただける。
「何より水が美味しいのが高森町の魅力。水が良ければ野菜も米も当たり前のように美味しい。自分自身、熊本で育ってきたので、やはり県外よりも、この高森での生活スタイル、働き方が自分にあっています」と加藤さん。
この日いただいたナスのスープは、いったん焼きナスにすることで、ナスの風味を限りなく生かした一品。スープの下に置いたカップには、コーヒー豆の粉で土に見立てた上にニンジンを飾るなど、お料理の提供の仕方にも心をつかむ工夫が光る。
「料理人の厳しい世界で生きてきて、それまで料理を楽しむ余裕などなかった。高森に来てようやく、自分が料理好きだったことを思い出しました。ここで働けるのは料理人冥利に尽きますね」と穏やかな表情で語る。
「地元の人たちは、シェフに会いたくてお店に来てくれるんです。皆さん口をそろえて『加藤さんはいい人だ』って。 加藤シェフは人気ものなんです」と大野さん。
高森に移住してきたお二人のキラリと光るセンスと人柄が、地域の人々の心をしっかりとつかんでいる。
2017年1月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維