曽爾村
芝田秀数

曽爾村長

曽爾村が「日本で最も美しい村」連合に加盟したのが2009年。村のいたるところで美しい村連合の看板を見かけるとともに、実際に、ふと目を奪われるたくさんの美しいシーンに遭遇する。「住み続けたいふるさと・曽爾村」を目指す芝田村長に、村の現状と今後の展望についてお話を聞いた。

「箱庭」のように、どこを取っても美しい風景がある村

曽爾村は、曽爾谷と呼ばれる一つの「谷」で、9つの大字(たいじ)と呼ばれる集落が曽爾川、国道、県道などに沿って散在しています。年間50~60万人の観光客が訪れる観光の村でもあります。11月上旬、曽爾高原の一面のススキが見ごろを迎える時期が観光のピークで、大阪からだとクルマで約2時間、奈良市内だと1時間半もあれば着くので、日帰りで楽しめる高原リゾートとして人気です。
村の経済は、林業、農業、それに観光の3つが大きな柱です。今年の8月に設立された一般社団法人「曽爾村農林業公社」は、農林業の後継者の育成や生産品のブランド化などを目的としており、農、林、観光に加え、曽爾村の地域資源を生かした六次産業化にも力を入れ、9つの集落が特性を生かした取り組みを始めたところです。その一つにゆずの加工品があり、いま地域の人々と連携しながら、曽爾ならではの加工品の開発をしています。
また、珍しいのがメダカを使ったまちおこしです。曽爾村の西端、伊勢本街道の「山やまかす粕」と呼ばれる地区にメダカ街道と呼ばれるエリアがあり、10軒ほどの家でそれぞれ品種の異なる30種類以上のメダカを飼育、販売しています。購入を希望する方には全国に地方発送もしています。中には1匹2~3万円する高級メダカも。テレビ番組で紹介されたことで、曽爾村のメダカ街道は一躍有名になりました。
村の現在の人口は約1560人と、ピーク時の1960年代に比べ3分の1に減少しています。他の地方と同様に村は高齢化、過疎化が進んでいます。先日の国勢調査では東京、神奈川、福岡、沖縄など一部の地域で人口が増えているものの、大阪は初めて減少したと発表されました。曽爾村の発展は言ってみれば大阪の発展とともにあるので、こうした人口の一極集中は厳しい現実です。
曽爾村でも、できる限り人口が減らないよう村を守ってゆく。その施策の一つに、地域おこし協力隊の積極的な採用があります。協力隊募集の説明会には全国から50名を超える参加があり、うち、30名ほどが応募してくれたので嬉しい悲鳴をあげました。現在、13人の隊員が、トマト農家、ほうれん草農家、曽爾米のブランド化など、農業、林業、観光などを支える担い手として活躍しています。
昔からその土地に住んでいると、改めてその「良さ」が分からず、何もない、と思う人が多いと言われますが、何より私たち村民自身が自分たちの「ふるさと」に誇りを持って、美しい自然景観や地域資源を後世に残していこう、と思うことが大事です。
私自身、曽爾村に生まれて育ちました。曽爾高原の美しさは何よりも一番だと思いますが、この村は「箱庭」のようにどこを取っても美しい風景があります。これらの自然景観は、失われたら二度と作り出すことが出来ない大事な資源です。
この大切な自然を守り、生かしてゆきながら「住み続けたいふるさと・曽爾村」を目指しています。

2016年10月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維