高山村
湯本 恵
信州高山温泉郷観光協会
高山村生まれの高山村育ち。「旅はハッピーな人が楽しむもの。そんな人に向き合いたい」と観光業に転職。培ってきた人脈による「引き出し」の多さが湯本さんの武器だ。
「ハッピーな人」をもっとハッピーにする仕事
もともと、村役場内にあった信州高山温泉郷観光協会の事務所が、信州高山アンチエイジングの里スパ・ワインセンター(通称スパイン)の完成とともにセンター内に移転したのが2010年。村内に湧く温泉や豊かな自然環境などを活用しながら、高山村では「アンチエイジングの里づくり」に力を入れており、温泉(スパ)とワイン、村を代表する二大資源を組み合わせた村の観光拠点が「スパイン」だ。
地場産の野菜や果物、特産品が並び、テラスには足湯も完備。その一角に、観光協会の事務所兼窓口がある。ここに勤務する湯本さんは、村の見所や魅力を、日々訪れる観光客に案内している。
保険業からの転職で、観光業は未経験。「観光は、旅を楽しんでいるハッピーなお客様がターゲット。そんなハッピーな人々に向き合うような仕事をしたいと思ったんです」。タイミング良く、人材を募集していることを知り、「これだ!」とひらめいた。その日のうちに履歴書を送付し採用となった。
村を訪れるのは関東圏からの個人客が多く、窓口で一番聞かれるのは、温泉やその時期の見所について。「ここで見られる景色は、毎日同じように見えても、今日と明日では違います。景色が一期一会なら、窓口業務も一期一会。ここでお会いしたお客様と、もう一度、会えるかは分からない。そういう意味では、目の前にいる一人ひとりのお客様と『一期一会』の気持ちで向き合っています」と湯本さん。
高校を卒業後、1年だけ東京暮らしを経験した。埼京線の満員電車に揺られていた頃、車窓から見える景色に四季を感じたことはなかった。だが、東京人になれたことが何より嬉しくて、「東京を離れたくない」と後ろ髪を引かれながら村に戻ってきた。この村が暮らしやすいと感じたのは子どもを産んでから。「自分が家を留守にしても、子どもはお友達の家で過ごしたり、ご飯を食べさせてもらったり。地域の人々に愛されることの有り難さ、この村のあたたかさを感じたのはここ10年くらいでしょうか」
未経験からスタートして、観光協会の会員さんや周りの人々に育ててもらったという7年半。仕事のうえで、一つの分野に特化したプロフェッショナルにはなれないと気づいた時、自分にとって何が財産かと言えば「人とのつながり」だと気づいた。「自分は何かのプロにならなくていいんだ。プロである人を知ってさえいれば、何かを相談された時に、『この人をつなげよう』と思える引き出しがあればいいんだ、と気づきました」
この高山村で美しいと思うシーンは、毎日の通勤路。「松川沿いをクルマで走ってくる途中の今なら燃えるような紅葉と、そこに架かる朱色の橋。そして、木々の間から見える集落や、田園にモヤがかかったような幻想的な風景に心がハッとします。『今日、何かいいことがありそう』『今日も一日頑張れそう』と思える風景に出会えるのが嬉しいですね」
2017年10月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維