塚原
渡辺 理

オーベルジュ「フォレスト イン ボン」オーナー

偶然訪れた塚原に引き寄せられるように移住して21年。静寂な森のなか、「北欧」をテーマにデザインされた宿とフランス料理を提供する。「景観を活かした観光」で塚原を盛り上げる若手の一人だ。

「ビビビ!」ときた塚原で宿を続けて20年

森のなかに静かにたたずむ、1日3組限定の宿とフレンチレストランを併設したオーベルジュ。「ミシュランガイド大分2018」では三ツ星ホテルに選ばれた。
鳥のさえずりと風の音に包まれたシンプルなステイが楽しめる。母屋のレストランでは、世界的に有名なフレンチ「ポール・ボキューズ」で修業した湯布院出身のシェフを迎え、目にも舌にも楽しめるフレンチがいただける。
福岡出身の渡辺さんが縁あって塚原の地に移住してきたのが今から20年前。当時、福岡で商売をしていた。結婚して子どもが生まれ、仕事も軌道に乗り始めた頃だった。ゆくゆくはペンションをやりたい。だが、それは子どもが巣立ってからの自分の「夢」として。
それが20代半ばにして、両親の友人だった前オーナーの所有する母屋を引き継ぎ、まったくの素人から宿を運営することに。「塚原の地を訪れ、ビビビと来たんです。賑やかな湯布院でなく、この塚原でやりたい、そう思いました」。すぐに奥さんを説得し、建物を購入。「今しかない、とすぐにお店をたたんで移住しました」。
ここ塚原地区は、もともとは農村地。渡辺さんのように、惚れ込んで移り住んできた人が商売をはじめたのが現在の観光地としての塚原高原だ。古くから湯治場として栄えた塚原温泉は全国的にも珍しい泉質で多くの湯治客が訪れる。
「とはいっても塚原のどこを掘っても温泉が湧く土地ではなかったことから、このあたりを『塚原温泉』でなく、『塚原高原』と呼ぶようになり、徐々にメディアに取り上げられるようになりました」
移住してきた20年前、住民との接点はあまりなかったが、子どものPTA役員などを通じて、徐々にかかわりが増えていった。年月をかけて、地域活動などにも積極的に参加することで、少しずつ地域の一人として受け入れてもらえるようになった。
「この塚原の土地と自然を守ってきたのは、昔から住む方たち。自分もその一人としてともに汗を流し、地域に貢献する気持ちでいます」
これまでも、新旧を問わず、すべての住民が一丸となって「安心して暮らせる塚原」を目指し、市や県に要望を出すなど、その実現のために働きかけてきた。
「『日本で最も美しい村』連合に加盟した時も、スタートは一緒です。古くからの農業と新しい観光が少しずつ接点を持って、お互いに協力し合いながら、目指す地域づくりのために行動を起こしてきました」
今後のテーマは「塚原の情報発信」。「地域内にお金が循環するシステムを確立させることと、塚原の景観を活かした観光戦略を練り上げていきたい」と意欲を見せる。
この先、敷地内に新たな母屋を建て客室を増やす計画もある。
「社会人と専門学生、二人の娘が宿の運営にも興味を持っているのが嬉しいですね」

2018年7月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維