小川村
染野隆嗣
小川村 村長
小川村生まれ。一度は民間で就職した後、村役場へ。副村長を5年務めた後、今年4月から村長に就任。人口減、高齢化など抱えている課題は深刻だが、一番の課題は村の将来を担う「子どもたちが暮らす村にすること」と話す。
村の子どもたちを減らさないために
「にほんの里 百選」や「信州の自然百選」にも選ばれるなど、その景観が高く評価されている小川村。「日本で最も美しい村」連合に加盟して9年。「美しい村推進事業という取り組みも行い、村が主体となって、花や樹木を植えたり、草刈りなどの手入れをするなど、美しい村としての地道な取り組みを続けてきました」。村長は「美しい村」としてのあり方をこう考える。「特別、何か着飾ったり、必要以上に大きく見せる必要はなく、人間だったら、毎日身なりを整えるように、村も、日々、地道な手入れを続けていくことが大事だと思っています」
「村外の人や県外の人が、小川村を訪れた時、ここはよそと違う、さすがは美しい村にふさわしい場所だな、と思ってもらえるよう、地域住民も、行政も、それぞれが意識を高める。そこに加盟している価値があるのだと思います」
以前は草だらけ、手入れのされないまま放置されていた公園も、見違えるように景色が変わった。とは言っても、「毎日、ここに暮らしていると、以前と比べて、綺麗になったことに気づきにくいかもしれませんが、その精神は村に確実に根付いていると思います」
「おやきの里」として知られる小川村。稲作にむかない土地柄のため、小麦粉、そば粉などの粉物文化が発達した村で、おやきは庶民の日常食だった。染野村長の思い出は、「灰焼きおやき」。「親戚の家に行くと、囲炉裏の灰の中におやきを入れて焼いて、その灰をぱっぱっと払いながら食べてね。灰の中から出されたものを食べろ、と言われてビックリした記憶があります」と懐かしむ。
村の基幹産業は農業だが、兼業農家がほとんど。かつては養蚕も盛んで、お蚕さんのエサとなる桑畑も広がっていた。「ほんの50年前は、山の峰まで辺り一面、畑が広がっていて人々はカマでひたすら農地を耕していた。今のように北アルプスを美しい景観だと眺める余裕もなかった時代です」
昭和39年に約9100人と最盛期を迎えた村の人口は、それ以後、減少の一途をたどり、現在は約2600人。しかし若いファミリー層など小川村を選んで移住する人々も増え、昨年、県外からの移住者は23人と、「転入の流れ」は確実に強まっていると感じている。
「移住したい人を受け入れる住居の問題があります。これまでも一戸建ての村営住宅を作ってきましたが、数が追いついていない。この先、住宅対策は力を入れていきたいテーマのひとつです」
そして、染野村長が一番の課題と感じているのは「村の子どもたちの数の確保」。「小学校を維持するためにも、ひと学年20人は維持していきたい。若い子育て世代を増やしていきたいですね」少子化対策は切実だ。
結婚支援、子育て支援、起業支援など、小川村で叶えたいことを応援するバックアップ制度も充実している小川村。行政に40年以上関わってきた染野村長の挑戦は始まったばかりだ。
2018年10月取材
執筆:高橋秀子 撮影:田村寛維